19th December ,2018

ANCHOR HOTEL FUKUYAMA

12/15 ANCHOR HOTEL FUKUYAMA がOPENした

ここの話の打診をいただいたのは今年の夏頃だった
打診は頂いたのだが、それから話がなくどうなるのかはわからなかった
8月を過ぎた頃、そろそろほんとうにやるなら打ち合わせしなきゃ間に合わないとこちらから声をかけた

その頃、おれは東京 渋谷BRIDGE の現場でバタバタとしていた為、なかなか時間が合わず、結局初の打ち合わせが9月にもつれ込んだ
サンクレア 中田氏
建築家 西村崇建築設計事務所
そして話をつないでくれた幼馴染でサンクレアともつながりの深い東氏
三人がOFFICEに訪れた

話の内容から12月にOPENしたいとのこと
残りは三か月を切っていた
今、NIWATANへの依頼傾向としては基本計画段階での依頼がほとんどの為、着工は約2年くらい先になる依頼が多い
こんな工期でデザインを考えていくことは少ない
自分の中でこの仕事を受けることができるのかどうか、悩んだ

何故かというと、それはずっと自分の中で決めていることで、自分に依頼してくれた方に対して自分らしいパフォーマンスを出せない仕事は受けないということを決めていたから
仕事の大小ではなく、期待にこたえられるのかどうかという問題

初回の打ち合わせで予算、工期、その他のことを聞き、これはいい結果が出せないと判断し、外構計画にお金をかける意味、それによりできることが変わること、おれの仕事は庭を作ることではないということ、そんな話をし、今の話ではパフォーマンスを出すことができないから、いくつかの案を提案し、どういう結果になろうと構わないからもう一度この話を社に持ち帰り、うちに依頼するのかどうかも含め考え直した方がいいという話をした

NIWATANは、庭をつくる会社ではあります
でも、いまやっている仕事はそれだけではない
建築側と話をしながら領域を絡めあい、どちらがパフォーマンスをだせるのか検討し、いい方を選ぶ
そうやってお互いを尊重し、いい空間を目指す

だから、SIGNや表札、照明はもちろん、オブジェや内装 建築内部まで仕事が及ぶこともよくある
左官工事、大工工事、鉄工事、石工事、照明、水道、もちろん植栽工事
空間に関してのコンサル業務も伴う

今回のケースもそうだった
当初の計画で本当にそこに庭が必要なのか。
計画予算はどういう導き方をしているのか。
費用対効果があるのか。
ここでどういう営みを生みたいのか。
庭を作ることでの付加価値はなんなのか。

そんなお話を交わした

それからどうなるのかと思ったが、中田氏の反応は早かった
次の日に連絡があり、「失礼な依頼をしてしまいすいません。提案頂いた案でぜひお願いします」と返事をしてくださった

おれはその中田氏の素早い対応がとても嬉しかった
その後、打ち合わせになったが、建築の話が主。庭のことはほぼフリーで任せてくれていた
その中で、福山の産業である鉄でいろんなもの作りたいとの話を西村氏から聞いた
その時で工期は残り2か月を切っていた
その段階で、まだ施工者が決まっていなかったのでおれはいつも右腕としてうちの鉄工をやってくれていた 千年の井上君を差し出した
井上君に連絡し、サポートするからやってあげてほしい。と。。。

ここからが苦しかった
2か月前に工事の全容を知り、そこからプランを考えるも名案が浮かばない
プランは30を超えたがこれだと思ったプランに行きついた時、すでにOPENまで10日を切っていた
段取りに間に合わない電気配線や、歩道を敷地に取り込むためのインターロッキングはすでにプランを出していたが、他の段取りとの調整で打ち合わせしたが、実際の庭の施工に与えられた工期は僅か2日だった

そこから素晴らしいチームプレイがはじまった
今回、このプロジェクトでは地元福山の地産地消というテーマもあった
それ故、庭のデザインも福山の産業である鉄、材木 オリジナルのオブジェベンチで空間を構成するプランを考えていた
材木は  池上産業のアコヤ材 池上さんが協力してくださった
鉄は井上君の手が空かない
建築側へ井上君を差し出したことを少し後悔した
その上、今回の案件はCADで書かなければできない角度と寸法で精密なプランだった
とっさにおれは㈱三暁 の早間君に連絡し、工期がないんだけど助けてほしいとお願いした
早間君は、嫌な顔一つせず、喜んで引き受けてくれた
納期は五日後、図面は随時送る と。

早間君は、そんなバタバタな依頼をニコニコした笑顔で受け入れてくれた
毎晩朝方まで図面のやり取り。
おれは昼間はその他の造作を副代表の友川、急遽呼び寄せた以前のスタッフ望月と。
その最中にも早間君と詳細のやり取り。。。そんな中で何とか鉄工を収めてくれた
現場溶接が必要になった頃、井上君の建築側への納品が終わり、急遽現場溶接を手伝ってくれた
焦って作った鉄工のため、指示に落ちがあったが、早間君は再々現場に足を運び作業を手伝ってくれた

そんなやり取りの中、早間君率いる ㈱三暁 が数少ない鍛造いかりの製造を得意とする会社であるのに鍛造仕事を依頼できていないことが頭に引っかかっていた
それが功を奏し、一つのアイデアが。。。

今回この「ANCHOR Project」はアートディレクターの飯島広昭氏 が監修している為、ロゴは飯島氏のデザインだった

そのロゴをオブジェ化したらシンボルになる。。。
そんな景色が頭に浮かんだ
すぐに早間君に連絡し、簡単な絵でこんなものを作ってほしいと。

早間君は、すべての短納期の仕事をできたその日の夜納品というあり得ない日程で予定通りやってくれた

そうやってがんばって迎えたOPEN当日・・・

庭は完成しなかった

正直、二日では無理かも。。。と心の中では思っていた
でも、やってみると中田さんと約束をした

もう間に合わない もうこの辺であきらめて終わらせようか。。。そんな気が何度もよぎった

もちろんそれは本意ではなかった
そんなこと、今までしたことはない・・・
それではここは流行らない
心地いい空間にならない
最後まで納得いくようやり遂げよう
人が集まる空間になるまで

そう思い、一度作ったベンチに手をかけ、壊した

その夜、中田さんが諸事情で不在の中、サンクレア 東さんが声を掛けてくれた
「もう工期のことは考えないでください。社長の細羽も納得いくものを作ってほしいと言っています。外に善さんがいるホテルということで大丈夫ですので、工期は善さんが決めてください。」と・・・
1F 「ANCHOR BAR with あき乃」の鹿田さんも工期の延期を快く受けていただいた

有難い言葉だった

OPEN後には、多くの方が訪れその中には知り合いも多く「おー、まだ終わってないんだ。善ちゃんらしくていいね。いいものつくるってやっぱり時間かかるもんね」といい意味で声を掛けてくれた
差し入れを持ってきてくれる方も多くいた
とても有難かった

そして、昨晩 完成した

工期が遅れることはいいことではない
でも、本当に大事な事は何なのか、中田氏との会話の中で語ったことを最後まで守れた気がする

この工事でも大事な事を貰い、また共有できた気がする

大人が通常行う仕事ではあり得ない出来事を、いい意味として受け取ってくれたみんなに感謝できると共に、
ほんとうに作っているのは人と人との心のやりとりであり、その出来上がったものとそこに費やした時間がそこに関わった人、その後訪れる人にとってその後の人生に影響しうることなのかどうかということだと実感できる思い出深い現場となった

だから庭を作るだけではないんです・・・

庭はそんな中でできていくんです

アートディレクター:飯島広昭
建築家:西村崇建築設計事務所
外部空間 設計・施工 + ANCHORオブジェデザイン:LANDSCAPE NIWATAN
鉄 内装テーブル・建具:㈱千年 井上裕樹
鉄 外部 + ANCHORオブジェ製作:㈱三暁 早間寛将

14th March ,2018

ELLE DECOR no.154

ELLE DECOR no.154』 に onomichi[n] が掲載されました