11th June ,2007

モノを大事にする気持ち

ここ二週間は、日曜日は現場を空けています。。。
段取りや、挑戦の日に決めています。。。
時間にゆとりがなくなると、引き出しがなくなってきます。。。
パワーをためなければと思い、日曜日は準備の他に、道具の整備、新たな発想の確認の時間にしています。。。

それはさておき、以前、俺の作庭にとって、一番重要なことの話をしたと思う。
俺が何のために庭を作るのか、作庭する上で何を一番考えるのか。
俺には、庭を世の中の人達に伝えていく役割がある。
いかに愛着を持てる庭を提供できるかが俺の力量にかかっているわけだ。
完成引渡し後、現場に立ち寄った時にきれいに管理されている庭なら成功なのです。

自分のエゴで庭をつくるわけじゃなく、自分がお客様になりかわって、自分の発想を表現するのです。

このお客様には、こんな感じの庭が・・・
そんなことを思って作庭する。
俺の庭には、あまり既製品がない。

そこには、一つのこだわりがある。
完璧にきれいなものに、あまり魅力を感じないんです。
少しゆがんどったり、曲がったりしとるものに魅力を感じてしまうというか、それを生かしたいとおもうんよな。
誰が見てもこう使うってわかりきった製品に魅力を感じんのんよな。。。
俺ならここを使う、他の人なら違うかもなってところに個性を感じる。。。
「石はこう据える」なんて言う人もいるが、それはその人の考え方で、それが絶対ではないと思う。
どんな据え方をしようが、どんな庭の見方をしようが、据える人、見る人の自由だ。

なぜうちに仕事を依頼してくださったのか。。。
なぜそのお客様と出会ったのか。。。
そんなことを考えていると、自分そこに庭を作る意義を考えてしまう。。。
俺がやらなかったら、これはしないだろうな・・・なんて事をどんどん増やしたくなるんです。。。
個性を発揮できる材料をふんだんに使いたくなる。。。

よく、「安けりゃなんでもいいんだよ。」なんて話を聞いたりする。

安いってなんだ。。。

何が安くて、何が高いんだ・・・

もちろん、安いに越したことはない。

しかし、安いからいいってわけでもない。
最低限かかる金額ってのはある。極端な話、10円じゃどうにもならんもんな^^
もちろん、ないお金をつくって無理をする必要はない。
安いもん買って、何気なく見てるより、少しだけ無理して、ずっと眺めていたいものを買うほうが安いんじゃないかな。。。

ただ俺は、そんな時こうアドバイスをする。

「無理する必要はないですよ。ただ、無駄なお金をかける必要もないですよ。お金をかけて喜べないなんてもったいないですよね。納得いく庭を作って、大事に管理してください。一気にする必要もないし、できるときにやったらいいじゃないですか。二度と作り替えなくてもいい、壊したくなくなるものを作りましょう。」

何でも簡単に手に入ってしまうものって、面白みがないんよな。
一所懸命、やっと手に入れることができたものって大事にするもんね。
要するに、モノを買うってことは「気持ちを買う」ってことじゃないかな。。。
何かを手に入れて、幸せな気持ちになる。喜べる。

前に、Aさんが、値段は高いがこの茶入れが欲しいと言った。
Bさんは、どうせあんまり使わんのんじゃけー、そんなに高いのじゃなくていい。と言った。
俺はBさんに言った。
Aさんは、使う使わんは関係ないんよ。

それを買って、持っていることに喜びを感じる。
それを見るたびに癒される。
その幸せな気持ちになれる時間を買うわけじゃろ・・・

庭も一緒なんよな。。。

そんな中、「流れのある庭」でもすでに、完成前の庭をお客様がめちゃくちゃ大事にしてくださっています。
ご主人も帰りが早くなったり、夜中に樹木のことが気になって庭に出たりって話も聞いたりします。。。
先日も、旅行に行かれたらしく、「いろんな庭をみたけど、この庭を見慣れたらなんか他の庭では満足できんかったわ。この庭はのびのびしてていい。」
って言ってくださった。

また一人、いや二人、庭に愛情を注いでくれる人を増やすことができたと嬉しく思う。。。
もちろん、俺の力だけではないが、少し手助けはできているだろう・・・

モノが大事にする気持ち・・・

自分も忘れたくないし、何か少しでも庭を通して伝えていきたいと思う。。。

たぶんすべてにつながってくるんだろうね。。。

31st March ,2007

庭をつくるということ。。。

今日、仕事のやり方を御依頼主に褒められました。

「もっとすぐに庭なんて出来るもんだと思ってました。こんなに丁寧な仕事をする庭師さんは初めて見ました。。。仕上がりが楽しみです。思うままにとことんやって下さい。」


嬉しかった。。。

ここまで言って下さる方は、庭を大事にしてくれる。。。


私は、一人でも多くの人に庭を眺め、大事に維持してくださる方を増やしたいと思っています。。。



庭ってほんとに大事なんです。


庭を大事にする人の家は綺麗です。

自分が大切にしている物を美しく見せたくなるからです。

家を見た時に見える物・・・まず「庭」です。。。


家が美しいという事は、身なりも美しくなります。

人も美しくなります。

行動も美しくなります。



だから、作る側の責任は重大なんです。。。



私が作庭する時に、一番重要視する事・・・



それは、私が感じるお客様のカラー、オーラです。。。


もちろん、立地、建築も左右してきますが、一番はお客様から感じた感覚なんです。。




だから、その庭は、そのお客様でなければありえないんです。




そのお客様の為の「庭」をつくる事。




もちろん、自分の中でのね^^





そして、そのお客様をもっと輝かせる事が出来れば、最高に喜びを感じます。。。




庭を通じて、今まで感じる事のなかった何かを感じていただければ嬉しいです。。。

14th March ,2007

そういうひとにわたしはなりたい(後編)


私には、不思議なくらいたくさんの良い出会いがあります。

自分に何か足りない時、必ずと言って良いほどそれを教えてくれる人物がフッと現れます。。。



ここ最近、とても親身になってくれるアニキ的存在の方にお世話になっていました。

そのアニキは、なんでこんなに良くしてくれるんじゃろう・・・って思うくらい俺のことをかわいがってくれます。いろんな事を教えてくれる。

アニキにとって俺は何の役にもたてないのに、それどころか迷惑ばっかりかけとるのにアニキはそんなことは構わず、ニコニコしていろんなことをしてくれます。


アニキは、若い頃札付きのワル。。。
停学18回で表彰されたという。。。
鑑別も少年院もいった経験をもつ。。。

校長さんに、「お願いだから辞めてもらえんか。」って頭下げられたくらい悪かったらしい。


目をあわしたら
「おどりゃー、なにガンたれとんなら!!!しばきまわすど~!!!」

目をそらせば
「おどりゃー、なに無視しょうるんなら!!!しばきまわすど~!!!」

と、こんな風だったと周りの人から聞いた。。。


18歳を境にコロッと人間が変わり、仕事に打ち込んだそうだ。

もちろん、いろんな経験をしてきたそうだ。

仕事の話、恋愛の話、人生の話、失敗談。。。すべてをさらけだして笑いながら話してくれる。

アニキもまた、感謝の言葉ばかり口にする。

いろんな人をかばい、とばっちりを受け、それでも文句一つ言わず、ニコニコしている。
曲がった事は大嫌いで、一本筋の通った人。

そのアニキはいつも言う。

「自分が嫌な事されても、そのまま同じように返しちゃいけん。じっと我慢して誤ってくるんをまっとくんよ。誤ってきたら水に流して許してやればええ。わかってくれりゃえ~んじゃけ~。」

と。。。


こんなことも・・・

「「遊ぶ時はあそびゃーえーんよ。その代わり、遊ぶんじゃったらその日食う分くらいは稼いでからあそべ~。自分が動いた分がお金。おいしい思いして稼いじゃいけん。汗水たらして働いた分だけが自分のゼニじゃ。」いうて親父によ~言われたわ~。」
と言いながら、アニキもそうである。。。


それから、気遣いがサイコーにできる人なのだ。








アニキとは二年ほどの付き合いになる。。。

これまた俺が飛び込んでいったんじゃけど、そんな俺を
「お~、わきゃ~のにがんばっとるの~。え~え~。力になるけーがんばりにゃ~!」
って、おもしろがってかわいがってくれた。


そんなある日、俺は失敗をおかしてしまい、そのことでアニキのところに相談しに行った。

「実は~~~~~・・・なんです・・・」

と言った俺に、

「そりゃ~いけんかったな~。まあ、今の時代じゃけ~そういうこともあるわ。そういう人もおるけ~な。ま~、もうえ~が~^^」


といって笑い飛ばし、その上、困っていた事を引き受けてくれた。。。

アニキにとってはマイナスなことなのに。。。


それからもずっと可愛がってくれている。


先月、またアニキに迷惑をかけてしまった。

が・・・

そのときも、少し注意する感じでしかってくれ、その後に・・・
「え~え~、気にすな~。わしがえ~よ~にしとるけ~大丈夫よ~^^」

って笑いとばしてくれた。。。


そのアニキがよく話してくれる。

「みんなが喜んでくれるのがわしゃーうれしいんよ~~~^^」



俺は、何度もアニキやYさん助けられ、勉強させてもらった。


「あ~、すごい人じゃ。俺もあんなひとになりたいな~・・・」


そんな日々が続いたある日、わかばが寄ってきて・・・


「ぱぱ~、きいてきいて~!!!」

「あめにもまけず かぜにもまけず
 ゆきにも なつのあつさにもまけぬ
 じょうぶなからだをもち
 よく(欲)はなく
 けっしておこらず
 いつもにこにこわらっている
 いちにちに げんまいよんごうと
 みそと すこしのやさいをたべ
 あらゆう(る)ことを
 じぶんをかんじょうにいれずに
 よくみききし わかり
 そしてわすれず
 のはらのまつの はやしのかげの
 ちいさなかやぶきのこやにいて
 ひがしにびょうきのこどもあれば
 いってかんびょうしてやり
 にしにつかれたははあれば
 いってそのいねのたばをおい
 みなみにしにそうなひとあれば
 いって こわがらなくてもいいといい
 きたにけんかやしょしょう(訴訟)あれば
 つまらないからやめろといい
 ひでりのときは なみだをながし
 さむさのなつは おろおろあるき
 みんなにばくしょうおう(でくのぼう)とよばれ
 ほめられもされず
 くにもされず
 そういうものに
 わたしはなりたい」




「おぼえたんよ~!!!」





「・・・」





まさにアニキはそういうものなのだ。。。




正直、その時の状況がリアルすぎて、心に響いた。。。




と同時に、一生懸命なわかばの姿に感動した。。。





そういうものにわたしはなりたい

28th February ,2007

そういう人にわたしはなりたい・・・(前編)

最近、毎日出会う人がいる。
その中の一人に、76歳の職人さん(Yさん)がいる。

14歳で志願兵として海軍に入隊し、貧しい時代を生き抜いた職人さんだ。

Yさんはいつも語尾にこんな言葉がつく。

「~さしてもらっている。」
「ありがたいことじゃ。」
「幸せな世の中じゃ。」

出てくる言葉は感謝の言葉ばかり。


Yさんとの出会いは二年ほど前だったと思う。

突然飛び込んだ私に親身になって相談に乗ってくれた。。。


会う度にたくさんの経験を話してくれる。仕事の事、技術の事、生き様など・・・



「わしは14歳で志願して兵隊に入った。20歳で徴兵がかかるが、できるだけ早く入って上の位に上がりたかった。

わしの歳で兵隊いった者はあまりおらん。あの頃は、元気なもんはみんな戦争に狩り出され、残ったもんは老人と20歳以下の子供だけ。。。

お国の為と言って死んでいった者がたくさんおる。


生きて帰るな・・・


そう教育された・・・あんなのうそじゃ・・・でたらめな教育じゃった・・・

「大和」を見送った後、わしの番が来る前に戦争は終わった。もう船も残ってなかったんじゃ。まだ船がのこっとったらわしも配属されとったろう・・・

わしの前に逝った若者らのお陰でこんな贅沢させてもらっとる。ありがたい。。。」


入隊間もなく防府の燃料倉庫がやられたらしい。その頃から、敗戦ムードになっていたそうだ。



「戦闘機がカラスのように大群でやってきて、ショウユ弾を落としていった。
下から大砲で反撃するも戦闘機まで届かんのんじゃ。歯が立たんかった・・・」


・・・


「戦闘機10機に追われ狙撃されたこともある。低空飛行でな・・・
草むらに寝そべって死んだふりをした時、自分を狙撃している兵士と眼があった。あの時の兵士の顔は忘れられん・・・」


・・・


「終戦後も、食えるのは麦飯か芋ばかり。麦飯も、丸麦じゃけー雑炊にせにゃくえんのじゃ。金なんてあっても意味なかった。金があっても物売ってくれんのじゃ。物々交換よ。たまに米にありつけたと思っても雑炊しか食ってないけー、米食ってもよう消化せんのんじゃ。腹壊して。。。」


・・・


「そう思やー今は幸せよ。金で物なら何でも買えるんじゃケー。」


・・・



「日本いう国は幸せな国よ。韓国や中国、インドへも仕事で行ったけど、日本みたいにどこに行っても最低限の暮らしが保障されとる国はないよ。仕事さしてもらえて、給料ちゃんともらえて。ほんまありがたい・・・」



そんな話をたくさん聞いた。。。

ゆっくりゆっくりため息をつきながら話してくれる。

その言葉には重みがある。


「わしは、生きていくのがやっとじゃった。一生懸命仕事してきたが、一つだけ後悔したことがある。。。30半ばまで親方に仕え、20年間小遣いだけで仕事してきた。。。お金がないなったら親方に小遣いもらうんよ。。。お金貯める余裕なんてなかった。。。こっちに戻ってきてここに来て初めて給料いうもんをもろうた。。。うれしかった~・・・もっと早くにこっちへ戻ってくりゃーこんなに貧乏せんで済んだのに・・・もっと計画的に動いて仕事をすればよかった・・・何年後にこうしよう、ああしようというビジョンを持たんといけん。。。」



Yさんは遠くを見つめながらそう言ってくれた。。。



Yさんと話をしていると、いつも心が洗われる。



われら世代の人々は自分の環境に感謝しなくてはならない。




遊ぶ自由も、仕事を選ぶ自由さえなかった人々が大勢いた事を忘れてはいけない。


ニートと呼ばれる人種が増えていると聞くが、挑戦できる環境にあることに気づいて欲しい。。。

何でもできる世の中である事に気づいて欲しい。。。

自分にしか出来ない何かがあることに気づいて欲しい。。。




毎日「死」と向かい合わせの生活をし、生きていくのがやっとだった人々がいることを忘れてはいけない。


仕事ができ、お金がもらえ、それで食べる物が買える世の中に感謝しなくてはいけない。




この幸せな環境に置かれた俺らがそのことを心から理解し、次世代に伝えなくてはならない。。。




親としても、


子供達に贅沢三昧に物を与え、苦労させず、冒険させず育てていくことが、子供にとってどれだけ不幸なことなのか気づかなくてはいけない。。。

何があっても生きていける精神を養ってやる、そして自分もそうなることが本当の優しさなんだと思う。。。




人それぞれそ伝える為の道具は様々だが、




俺にとって、それは・・・


「庭」であり、「わかば会」だと思っている。。。




後編に続く・・・

5th December ,2006

「福山を動かす」活動。。。

ここ最近、自分の周りが目まぐるしく動いています。。。


まずは、「福山を動かす」活動が一歩前進しそうです。

先日、尾道「やまねこカフェ」での講演を無事に終えました。
私が皆さんにお話しした内容は、庭師の仕事について、それを踏まえた上で自分の仕事について、自分の思い、まちつくりについて、という感じでしょうか。。。

多くの方から反響をいただき、嬉しい限りでした。

講演する前は、ここに自分の話を聞きたくて来た人が何人いるのだろうかと思いながら話を始めましたが、私はいつものようにビール片手に前に出て、いつものように話しはじめた・・・

結構うなずいてくれる人が多く、安心してトークも快調に進みました。。。

少しは皆さんのモチベーションを上げることができたのではないかと思いました。。。



と、ある方に余談でそのお話をしたのですが、なんと私の思いに福山市が協力してくれるというのです!!!



ついに福山市の登場です。。。ビックリ!!!



あれだけアプローチを続けていたにもかかわらず、断られ続けたあの頃はなんだったんだろう・・・って感じです。。。



やはり、続けていれば自ずと話はやってくるということですね^^

いずれは、尾道、広島県、日本。。。

夢は広がります。。。


ただいま「福山が好きじゃけ~!!!」構想を思案中です。。。

6th November ,2006

初弟子、研修に。。。俺の心の中の人。。。

そろそろ、弟子をとろうかな・・・と思っています。。。

ということで探していましたところ、一人の熱意ある若者が電話をくれました。


ということで「一度バイトとして、俺がどんな仕事してるのか経験してみた方がいいだろ。」て話をして・・・

今週彼がはるばる長崎から来ます。。。


どうしてそんな遠いところから来てもらうかっていうと、やっぱり修行って一人じゃないとできないんじゃないかって思うんです。

修行ってほんまは仕事覚えるんじゃないんよな。

一人の立派な人間になる為に、心を磨くんよな。

始めた時は、そんなことはわからない。技術を覚えようと必死にがんばるんよ。
それもいいだろう。。。

でも、技術なんてものは、時間かけて一生懸命やりゃできるようになるんよ。

要は、修行ってのは、一人になって、極限に耐えるってことじゃとおもうんよ。
それに耐えられなきゃ、職人なんて続かん。

何やっても続かん。


そして何より、作庭ってのはものづくり。しょうもない人間がつくるとしょうもない庭になるんよ。

人格以上のものは作れん。


俺はそう思うんよ。



俺は、修行時代にいろんな事を経験した。

親方には毎日よく叱られとった。

鋏が飛んでくることも。。。


そして、とことん貧乏じゃった。。。

食べる物を買うお金もなく、うまい棒でごはんを三合食べるなんて事はよくあった。

ただ、有難いことに、お米をくれるやさしい人がいてね^^

白飯はよくくったわ。

弁当は、毎日自分で作り、日の丸弁当に、おかずはウインナー二本。

夜はバターライス、ラーメン、たまごごはんの繰り返し。

たまに、レトルトカレーなんてほんまに豪華な食事じゃった。

外食なんてもってのほか。

野菜は早朝に朝市に行き、農家のおばちゃんに安くわけてもらった。

肉なんて滅多に食えんかった。

ただ、そんな中でもやりくりして、庭の本は良く買っとった。

そのうち、いろいろあって、本も買えんくなり、アパート代が払えんくなり、アパート追い出された。

寝床も失い、かといって泣き言言って実家には帰れず、途方に暮れた時期もあった。。。

今時、金もない、寝床もないなんて・・・

もう庭師は無理かも・・・って思った。



そんな時、一人の漁師さんが俺を拾ってくれた。。。



どん底に落ちた俺を。。。



家に泊めてくれて、毎日刺身を食わしてくれた。

毎晩酒を酌み交わし、人の道を教えてくれた。

頑張れと言ってくれた。

この人は、昔は極道だったそうだ。

ある時期を境に、スパッと足を洗い、今はまじめに漁師をされていた。


俺を見る眼はいつも優しかった。

叱ってもくれた・・・が、いつも最後は優しく笑ってくれた。。。


仏のような人だった。


俺の心の中が見えるのか、ゆっくりと紐解き、再び庭師の道に導いてくれた。

いろんな話をしてくれ、悩んでいると飲みに連れてってくれた。フィリピンパブに・・・

何も言わず綺麗なネーちゃん達と騒ぎ、帰りの車の中でポツリ、


「ぜん、ばかになった者勝ちじゃいや(下関弁)。がんばれや。」


そう言ってくれた。



そんな優しい漁師さんとの毎日の生活の中で、俺は、自分のちっぽけさに気づいた。


この人は、なんてすごい人なんじゃろう。
俺は、絶対にこの人のような人になろう・・・そう思った。


結局、約一年ここでお世話になった。
家賃も、食費も払わず・・・

なんの恩返しもできなかった。


今の俺を一番最初に作ってくれた人。

今、その人に会うことはできないが、いつも心の中にいる人。


話はそれたが、これはまだほんの一部の話。


こんな経験って一人じゃけーできた。

自分の力でなんとかしようっておもっとるけー、誰かが手を差し伸べてくれた。

一人じゃ生きていけない。でも、自分で精一杯頑張らんと、そんな人とは出会えない。

今の時代、うまい棒で三合めし食う奴なんておらんって思うじゃろ?
10年前はおったんよ・・・俺が・・・


ほんま、今じゃ信じられんような事が、ふつーにおこっとったんよな。

じゃけー、早くに独立できたし、庭師が辛いなんて思ったこともない。

そんな修行ができたけー、今こうして頑張れる。。。

じゃないと、今までお世話になった方々に怒られるわ^^




それが、今まで俺に優しい手を差し伸べてくれたたくさんの人への恩返し。。。




とにかく頑張ることが。。。



そして、弟子として入ってくる若者を、独り立ちできる立派な人間に育てることが。。。



そしてまた、自分も弟子に育ててもらうんだと。。。


こうして、御恩を御恩にかえ、しっかり繋げていこう・・・

10th August ,2006

眠っているもの・・・

ここ何日か、材料を探しまわってました。。。


見つけてしまったかも・・・お宝を・・・^^^^^^^^^^



庭に使われる材料っていろんな物があるけど、同じ自然界の産物でも限界の封印を張られている物がたくさんあるんです。


クズ石、ボロ木、なんて呼ばれて・・・


私としては・・・

『捨てられるような、クズの扱いをうけている素材に光をあてたい・・』



だいたい、クズなんてものはない!

そのものの良さを見てやれないだけなんです。

たくさんあるもの、安い物に価値を見出せない、希少価値のあるものに飛びついてしまうってこと、よくあるよね。

本当にその物の良さがわかってたらいいと思う。
でも、そうじゃない場合は多いよね。

ただ高いからいい。と先入観を持ってしまう場合は多いよね。


俺はそうはなりたくない。


これは!!!という材料を見つけた時、そこにおられる方に、

「私は庭師をしています。是非この材料を分けてください。」

こういうと、ほとんどの方が、

「こんな物、庭につかうん?そんな人聞いたことないわ^^」

って言われます。

「いや、僕はこれが好きなんです。誰も使ってなくてもいいんです。僕が好きなだけでいいんです。」

こう言います。

すると、みなさん面白がってかわいがって下さるんです^^;

「あんちゃん、おもれーのー。わきゃーのに。おっしゃ、わしにまかしとけーや。あんちゃんがえーよーにしちゃーるけー、いつでもこいや!(訳:お兄さん、おもしろいね。わかいのに。うん、私に任せなさい。お兄さんが思うようにしてあげるからいつでも相談にきなさい。)」

ってね^^





しっかりと、自分の眼で判断し、自分の感覚で材料を選ぶ。そして、素材の力を引き出す為に自分の力を注ぎ込む。

そうやって、庭を作っていきたい。


そうすることで、自分独自の庭を作ることができる。


そう思うんです。。。


新たな材料を探している時は、ウキウキします。

めちゃくちゃ楽しいんです。

自分で開拓するだけに、『おう、やっと出逢えたな。^^』なんて気になったりして。。。

どんどん、どんどん山の中にもぐっていきます。。。


山の少しの変化を見ながら、時には車から降り、時には行き止まりだったり・・・


変な目で見られることもしばしば^^;


そんな、無駄な時間を過ごしていても、自分にとってはすごく有意義な時間で、絶対に必要な時間なんです。

28th June ,2006

山陰へ。。。

植田正治写真美術館

以前、イギリスにいる建築家のモーリーと、かえぷーがお勧めしてくれていた。
ずっと行きたかった場所だった。。。





これが、ほんとにいい!!!


植田正治という人は、写真家としての目線が普通じゃなかったみたいだ。




見事なほどの構成。かといって堅苦しくない、すんなりと入り込める写真ばかりだった。お茶目で笑いが出る作品も少なくなかった。。。




一番心に響いたのは、彼が発した言葉だった・・・

「普遍的興味から写真の世界に入り、やさしいと思っていた対象が最も難しいことに気づかされた。」





つまり、彼ははじめは人物を撮っていた。そのうち、風景、オブジェのような物を撮っていく。しかし、晩年は人物にもどる。。。

やさしいと思っていたことが最も難しい・・・

どんな世界でも言えることだと思った。。。





ここは、写真も良かったが、何といっても建築、立地条件が抜群だった。

高松伸という建築家の建物だが、コンセプトが面白かった。
美術館そのものが、カメラの内部構造のようになっているんです。

さらに、水とガラスを使った遊びが点在しているんです。


これは、言葉じゃ説明できないので行って確かめてください^^





ここを後にし、鍛冶屋の知識を得るため、安来鋼の資料館に行きたたら吹きを見る。。。

最高級の玉鋼は美しかった。。。



最後に足立美術館


ここは、横山大観のコレクションが主だが、陶芸館もあって、魯山人や河井寛次郎の昨品も多くあり、貴重な場所だ。

もう一つの売りは、庭。

京都の中根金作という造園家が作った庭で、海外からいい評価を得ている。
なんといっても、ここの管理のすごさに驚いた。葉っぱ一枚落ちてないのです・・・


庭については、色々な見方がありますが、地割り(地面の構成)が面白い庭だと思った。




と、リフレッシュしたところで・・・

24th June ,2006

建築セミナー 安藤忠雄

先日の日記にも書いてましたが、兵庫県立美術館で開催された「建築セミナー」に参加した。



2時間の講演と座談会という形式だった。


講師として、

初日。。。
青木淳さん、西沢大良さん。

二日目は。。。
安藤忠雄さん、蓑豊さん。


青木淳さんは、ヴィトンなどを手がけた建築家。磯崎新アトリエを経て独立。
まったく偉そうぶる事もなく、ごく普通に、ナチュラルさがにじみ出た人だった。
当たり前だが、モノを見る眼に鋭い感覚をもった方でした。
とても好感がもてました。


西沢大良さんは、変わった視点で建築をされている方だ。
秘めた人間というか、にじみ出るものを感じた。


蓑さんは、金沢の21世紀美術館の館長さん。
すごい方なのだが、私の中では少し考えに疑問点があった。。。



何といっても、安藤忠雄さんには感動してしまった。
ミーハーな気持ちではなく。。。

やはり、考え方、人間性、レベルが違う。



私は昔から、安藤建築は好きなのですが、ただ一つ疑問があった。

それは、骨格がコンクリートの建築なので長くはもたないということ。
それから、もたなくなった時にでる、膨大なコンクリートガラのこと。


安藤さんは、そのことについてこう答えた。
「今の建築は、40年~50年で壊される。コンクリートの建築も、もって60年。でも、メンテナンスをすれば120年はもつ。
私は作る前に、お施主様にメンテナンスができますか?と問う。できません。と言ったお客さんにはさようならと言う。そして、自分が作ってきた建物は、責任もってメンテに行っている。今日もスタッフ10人連れて、朝から、今もスタッフはこの美術館のメンテをしている。」


兵庫県立美術館は、安藤忠雄の設計です。


そして昔から、
「私の建てた建物が嫌になった時には、私が買い取ります。」


といっていたそうだ。



120年しかもたんのか、とか、産業廃棄物がたくさんでることは気になるが、あそこまでズバッと心意気を聞いてしまうと、許せてしまう・・・

安藤批判をいろいろ言う人も少なくないが、やはり安藤忠雄はすごい!!!


コンクリートガラをどうするのかは聞けませんでしたが、環境のこともしっかりと考えているんです。

直島もそうですね。。。




とにかく仕事に対する情熱、生きる事を楽しんでいるオーラを感じると共に、自分に重なった部分があることが嬉しかった。。。


私も以前、お施主様を説得する時に

「私が作った庭が気に入らないのであれば壊して元通りにして帰ります。作った庭を見て判断してください。」

と言って現場にはいったことがありました。

あの時のパワーは自分でも凄かったと思う。
結局、2ヶ月かかり、無事終了した。





話が反れたが、とにかくいいパワーをもらったと共に、建築家と庭師の考え方にそう違いがないことを実感できた二日間でした。。。

13th June ,2006

安くいい庭

先日の日記のコメントから私の思い。。。
やはり、皆さん安く良い庭にしたいと思うのが当然で、その辺をどう折り合いつけていくのかというのは課題の一つです。
なるべく安くというのは、私の考え方とすれば、長い眼で見て安く、しかも無駄がないことだと思っています。
いくらその時に安く済んでもやりかえたくなるようでは高いものについてしまう。
一生その庭で満足できるように作るのがもっとも安くつく庭だと思います。
その為、私は、お施主さんとの話し合いになるべく時間をかけるようにしています。

「あせらないで下さい。やろうと思えばどうにでもなりますから、ゆっくり考えて最もいい方法をみつけていきましょう。」といつも投げかけています。

それから、今は撤去にお金のかかる時代です。いかにそこにある捨てられるような物に価値を見出すことが出来るかが私の仕事だと思っています。
それから、いかに現状を壊すことなくイメージを変えることができるか。という事に力を注ぎます。

環境問題も考え、できるだけ自分達でできることはやる。国に頼らず、使える物は使う。
それによって、大事な資源なのにゴミのように扱われる物を大事に使う。長所を引き出す。。。

人によってモノの見方には大きな差があります。
庭のことに関して言えば、それはわれわれ庭師にも問題があります。

値段の高い物がいいものだ。って風潮がありますから。

しかし、金さえ出せばいいものが作れるのであれば誰でもできます。
ゴミのように扱われている物の、いいところを見つけてやれるかが庭師の力量だと私は思います。
私は、そこを目標にしています。
確かに、安ければいいってもんじゃありません。
しかし、無駄にお金を出す必要はありません。

長い眼で安く済む方法をいつも考えて、お施主さんに説明させていただいています。

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